コスト低減

ステンレス加工の歩留まりを改善する素材取りのポイント

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はじめに

ステンレスは、耐久性やさびにくさに優れた素材として、さまざまな製品に使われています。厨房機器や建築金物、機械部品など、私たちの身の回りにも多く存在しています。

一方で、ステンレスは決して安価な材料ではありません。材料価格の変動も大きく、「少しでも無駄を減らしたい」と考える加工現場は少なくないでしょう。

そこで重要になるのが「歩留まり(ぶどまり)」です。歩留まりとは、購入した材料のうち、どれだけを製品として有効活用できたかを示す考え方です。例えば、100kgの材料を使って90kg分の製品ができれば、歩留まりは90%となります。

歩留まりが良くなれば、材料費の削減につながるだけでなく、廃材の処理費用の低減や作業効率の向上にもつながります。

その歩留まりを左右する大きな要素のひとつが、「素材取り」です。素材取りとは、板材のどこにどの部品を配置して切り出すかを決める作業のことです。

この記事では、ステンレス加工における素材取りの基本と、歩留まりを改善するための具体的なポイントについて、専門用語をできるだけ使わずにわかりやすく解説します。

歩留まりが重要視される理由

材料費の上昇が利益に直結するため

ステンレスは鉄などに比べて材料費が高く、価格変動も少なくありません。

そのため、同じ数量の製品を作っていても、材料の使い方によって利益は大きく変わります。

例えば、歩留まりが85%から90%へ改善されるだけでも、年間を通じてみれば大きなコスト削減につながります。扱う材料の量が多い企業ほど、その効果は大きくなります。

廃材の処理にも費用がかかるため

切断後に残った端材は、再利用できない場合には廃棄や売却の対象となります。

しかし、保管スペースの確保や仕分けの手間、処分費用などが発生することもあります。

材料を有効に使い切ることは、単に材料費を抑えるだけでなく、こうした見えにくいコストの削減にもつながります。

生産効率の向上につながるため

歩留まりの悪い素材取りでは、余分な材料交換や追加発注が発生しやすくなります。

その結果、段取り替えが増えたり、納期に余裕がなくなったりすることがあります。

無駄の少ない素材取りは、作業の流れをスムーズにし、生産全体の効率向上にも役立ちます。

素材取りとは何か

板材の上に部品を配置する作業

素材取りとは、一枚のステンレス板の中に、どのように部品を並べて切り出すかを決めることです。

同じ部品を作る場合でも、配置の仕方によって使える面積は大きく変わります。

例えば、ただ順番に並べるだけでは隙間が多く生まれてしまいます。一方、向きを変えたり、組み合わせたりすることで、余白を減らせる場合があります。

この工夫の積み重ねが歩留まりの改善につながります。

素材取りは経験だけに頼らない時代

以前は、ベテラン作業者の経験や勘によって素材取りを行うケースも多く見られました。

もちろん経験は重要ですが、製品の種類が増えたり短納期化が進んだりする中で、経験だけでは最適な配置を見つけることが難しくなっています。

現在では、専用ソフトを活用して効率的な配置を検討する企業も増えています。

ただし、ソフトを使えばすべて解決するわけではありません。現場の状況を理解したうえで判断することが大切です。

歩留まりを改善する素材取りのポイント

部品の向きを柔軟に考える

素材取りでは、部品を同じ方向に並べることが一般的です。

しかし、製品によっては向きを変えて配置しても問題ない場合があります。

例えば、上下を反転したり、左右を入れ替えたりすることで、部品同士の隙間を小さくできることがあります。

「いつもこの向きだから」という固定観念を持たず、別の並べ方も検討することが重要です。

複数の製品を組み合わせる

同じ製品だけで一枚の板を使い切れない場合、小さな空きスペースが発生することがあります。

そのようなときは、別の製品を組み合わせる方法が有効です。

小さな部品を空いた部分に配置できれば、材料を無駄なく使えます。

受注状況を把握しながら、複数の仕事をまとめて素材取りする仕組みづくりも重要です。

端材の活用を考える

切断後に残った材料は、すべてが不要になるわけではありません。

大きさや形によっては、次回の加工に利用できる場合があります。

端材を再利用しやすくするためには、

  • サイズを記録する
  • 材質を明記する
  • 保管場所を決める
  • 在庫を一覧で管理する

といった工夫が必要です。

「どこに何があるかわからない」という状態では、使える端材も活用されずに終わってしまいます。

必要以上の余裕を取りすぎない

切断時には安全性や加工精度を考慮して、ある程度の余裕を確保する必要があります。

しかし、過去のやり方をそのまま続けていると、必要以上に広い間隔を空けていることがあります。

設備の性能や加工条件を見直すことで、適切な余裕に調整できる場合があります。

少しの改善でも、年間では大きな差になることがあります。

定番製品の配置パターンを標準化する

繰り返し製作する製品については、毎回ゼロから素材取りを考える必要はありません。

最も効率の良い配置を決めておき、標準として共有することで、誰でも同じ品質で作業ができるようになります。

また、作業時間の短縮にもつながります。

標準化されたデータは、教育資料としても活用できます。

素材取りを考える際の注意点

歩留まりだけを優先しない

歩留まりの改善は重要ですが、それだけを追求すると別の問題が発生することがあります。

例えば、部品同士を詰め込みすぎることで、

  • 加工時間が長くなる
  • 品質が安定しなくなる
  • 作業ミスが起こりやすくなる

といったリスクも考えられます。

材料を無駄なく使うことと、安定した生産を両立させる視点が必要です。

現場の作業性も考慮する

理論上は最も効率の良い配置でも、実際の作業では扱いにくいことがあります。

部品の取り外しが難しかったり、仕分けに時間がかかったりすると、結果的に生産性が低下する場合があります。

素材取りは、机上の計算だけでなく、現場の声を反映しながら改善していくことが大切です。

短期的な判断だけで終わらせない

一回の仕事だけを見ると効率が良く見えても、長期的には端材が増えてしまうことがあります。

将来の受注予定やよく使うサイズを考慮しながら、端材として残す価値があるかどうかを判断する視点も重要です。

目先の歩留まりだけでなく、継続的な材料活用を意識することで、より大きな改善効果が期待できます。

素材取りの改善を現場に定着させる方法

改善前後の数値を見える化する

歩留まり改善の効果を実感するためには、数値で確認することが欠かせません。

例えば、

  • 材料使用量
  • 廃材の重量
  • 歩留まり率
  • 材料費の削減額

などを定期的に記録すると、改善の成果がわかりやすくなります。

成果が見えることで、現場の意識向上にもつながります。

現場全体で情報共有する

素材取りの工夫は、特定の担当者だけが知っている状態では広がりません。

「この組み合わせが良かった」「この端材が活用できた」といった情報を共有することで、現場全体のレベルアップにつながります。

小さな改善事例でも積み重ねることで、大きな成果を生み出します。

定期的に見直しを行う

設備の更新や製品構成の変化によって、最適な素材取りは変わっていきます。

一度決めた方法をそのまま続けるのではなく、定期的に見直しを行うことが重要です。

「もっと良い方法はないか」という視点を持ち続けることが、継続的な歩留まり改善につながります。

まとめ

ステンレス加工における歩留まりの改善は、材料費の削減だけでなく、廃材の削減や生産効率の向上にも大きく貢献します。

その中心となるのが、素材取りの工夫です。

部品の向きを変える、複数の製品を組み合わせる、端材を管理する、標準化を進めるなど、特別な設備投資をしなくても取り組める改善策は数多くあります。

一方で、歩留まりだけを追い求めるのではなく、品質や作業性とのバランスを考えることも欠かせません。

現場の知恵とデータの両方を活用しながら、継続的に素材取りを見直していくことが重要です。

日々の小さな改善の積み重ねが、将来的な大きなコスト削減と競争力の向上につながります。ステンレス加工の現場だからこそ、「材料を最後まで大切に使い切る」という視点を持ち、歩留まり改善に取り組んでいきましょう。

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