プレス金型の材質とは?よく使われる金型材料を比較
プレス金型の材質が重要な理由
プレス加工は、金属の板を金型で挟み込み、曲げたり穴を開けたりして製品を作る加工方法です。自動車部品や家電製品、建築金物など、私たちの身の回りにある多くの製品に使われています。
そのプレス加工の品質を大きく左右するのが「金型」です。そして金型の性能を決める重要な要素のひとつが「材質」です。
金型は何万回、何十万回、場合によっては何百万回も繰り返し使用されます。そのため、材質選びを間違えると摩耗が早く進んだり、欠けたり、変形したりしてしまいます。
一方で、必要以上に高価な材料を選ぶと製作コストが高くなります。そのため、加工する製品や生産数量に合わせて適切な材質を選ぶことが重要です。
プレス金型に求められる性能
金型材料にはさまざまな性能が求められます。
摩耗しにくいこと
プレス加工では材料との接触が繰り返されます。そのため、表面が削れにくいことが重要です。
摩耗が進むと製品の寸法が変わったり、バリが発生しやすくなったりします。
欠けたり割れたりしにくいこと
金型には大きな力が加わります。
硬いだけではなく、衝撃に耐える強さも必要です。特に穴あけ加工で使用するパンチなどは、欠けにくさが重要になります。
加工しやすいこと
金型そのものを作る際には、切削加工や研削加工が行われます。
材料が硬すぎると加工に時間がかかり、製作コストが上がります。そのため、作りやすさも重要な選定ポイントです。
熱処理後の安定性
金型材料は熱処理によって強度や硬さを高めることが一般的です。
熱処理後に大きく変形すると仕上げ作業が難しくなるため、寸法が安定している材料が好まれます。
プレス金型でよく使われる材質
プレス金型で使用される材料は数多くありますが、その中でも特によく使われる代表的な材料を紹介します。
SKD11
最も広く使われる定番材料
SKD11は、プレス金型の材料として非常によく使用されています。
耐摩耗性に優れており、長期間使用しても摩耗しにくいことが大きな特徴です。そのため、量産用の金型に広く採用されています。
SKD11のメリット
SKD11には次のようなメリットがあります。
- 摩耗に強い
- 寿命が長い
- 多くの実績がある
- 入手しやすい
長年使用されてきた実績があるため、多くの金型メーカーが扱いに慣れている点も魅力です。
SKD11のデメリット
一方で、硬さが高い分、衝撃に弱い面があります。
細いパンチや形状が複雑な部分では、欠けや割れが発生することがあります。
また、加工性もそれほど高くないため、製作に時間がかかる場合があります。
主な用途
- 抜き型
- 穴あけ用パンチ
- 曲げ型
- 量産用金型
プレス金型の標準的な材料として位置付けられています。
SKD61
熱や衝撃に強い材料
SKD61は、熱や衝撃に強い特性を持つ材料です。
プレス加工だけでなく、アルミダイカスト用の金型や樹脂成形用の金型にも使用されています。
SKD61のメリット
SKD61の大きな特徴は粘り強さです。
衝撃を受けても割れにくく、欠けが発生しにくいため、負荷が大きい部分に適しています。
また、熱に強いため、高温環境で使用される金型にも向いています。
SKD61のデメリット
SKD11と比較すると摩耗に対する強さはやや劣ります。
そのため、長時間使用する抜き型では摩耗が問題になる場合があります。
主な用途
- パンチ
- フォーミング金型
- 衝撃が大きい部分
- 高温環境で使用する金型
割れや欠けを防ぎたい場合によく選ばれています。
SKS3
加工しやすくコストを抑えやすい材料
SKS3は工具鋼の一種で、比較的加工しやすい材料です。
金型製作の手間を抑えられるため、小ロット生産や試作金型で使用されることがあります。
SKS3のメリット
- 加工しやすい
- コストを抑えやすい
- 熱処理後の寸法変化が比較的小さい
試作品や少量生産用の金型では十分な性能を発揮します。
SKS3のデメリット
耐摩耗性はSKD11ほど高くありません。
大量生産を行うと摩耗が進みやすくなるため、使用条件には注意が必要です。
主な用途
- 試作金型
- 少量生産用金型
- 治具
コスト重視の場面で活躍する材料です。
ハイス鋼
非常に高い耐摩耗性を持つ材料
ハイス鋼は切削工具にも使われる高性能な材料です。
非常に硬く、摩耗しにくい特徴があります。
ハイス鋼のメリット
最大の特徴は寿命の長さです。
摩耗が少ないため、長期間安定した加工精度を維持できます。
特にステンレスや高張力鋼板など、加工が難しい材料を扱う場合に効果を発揮します。
ハイス鋼のデメリット
価格が高いことが大きな課題です。
また、加工にも時間がかかるため、金型製作コストが上昇します。
主な用途
- 高精度金型
- 長寿命が求められる金型
- 難加工材向け金型
金型寿命を最優先する場合に採用されることが多い材料です。
超硬合金
圧倒的な耐摩耗性を誇る材料
超硬合金は、プレス金型材料の中でも特に硬い材料です。
非常に摩耗しにくく、長期間高精度を維持できます。
超硬合金のメリット
- 摩耗が極めて少ない
- 高精度を維持しやすい
- 長寿命
大量生産を行う自動車部品などの分野で多く採用されています。
超硬合金のデメリット
非常に硬い反面、衝撃に弱い特徴があります。
強い衝撃が加わると欠けや割れが発生する場合があります。
また、材料費や加工費も高額です。
主な用途
- 超大量生産用金型
- 高精度部品用金型
- 精密打ち抜き金型
初期費用は高いものの、長期的なコスト削減につながる場合があります。
金型材料の比較
代表的な金型材料を比較すると次のようになります。
| 材料 | 摩耗への強さ | 割れにくさ | コスト |
|---|---|---|---|
| SKS3 | 普通 | 普通 | 安い |
| SKD11 | 高い | やや低い | 普通 |
| SKD61 | 普通 | 高い | 普通 |
| ハイス鋼 | 非常に高い | 普通 | 高い |
| 超硬合金 | 極めて高い | やや低い | 非常に高い |
それぞれに得意な分野があり、万能な材料は存在しません。
金型材料の選び方
生産数量で選ぶ
少量生産であればSKS3など比較的安価な材料でも十分対応できます。
一方で大量生産の場合は、SKD11やハイス鋼、超硬合金など寿命の長い材料が適しています。
加工する材料で選ぶ
加工対象によっても最適な材質は変わります。
軟らかい鋼板であれば一般的な材料で対応できますが、ステンレスや高張力鋼板など硬い材料を加工する場合は、高い耐摩耗性を持つ材料が必要になります。
コストとのバランスで選ぶ
高価な材料を使用すれば寿命は延びる傾向があります。
しかし、生産数量が少ない場合には費用対効果が合わないこともあります。
そのため、金型製作費と寿命のバランスを考慮して選定することが重要です。
表面処理を組み合わせるケースも増えている
近年では金型材料だけでなく、表面処理を組み合わせるケースも増えています。
例えば、SKD11に特殊なコーティングを施すことで、さらに摩耗しにくくしたり、材料の付着を防いだりできます。
これにより、金型寿命の延長やメンテナンス頻度の低減が期待できます。
必ずしも高価な材料へ変更しなくても、表面処理によって性能を向上できる場合があります。
まとめ
プレス金型の材質は、加工品質や金型寿命、製造コストに大きく影響する重要な要素です。
代表的な材料にはSKD11、SKD61、SKS3、ハイス鋼、超硬合金などがあり、それぞれ特徴が異なります。
耐摩耗性を重視するならSKD11やハイス鋼、超硬合金が有力な選択肢になります。一方で、衝撃への強さを重視するならSKD61、コストを抑えたい場合はSKS3が適しています。
最適な金型材料は、生産数量や加工する材料、求められる精度によって変わります。材料ごとの特徴を正しく理解し、目的に合った材質を選ぶことで、品質向上とコスト削減の両立につなげることができます。
